理化学研究所・東京大学・情報通信研究機構でセミナー講演を行いました。

チーフエンジニアの中川が、理化学研究所・東京大学・情報通信研究機構にて以下の3件のセミナー講演を行いました。 ・9/4(水):理化学研究所 数理創造プログラム 産学連携数理レクチャー「量子コンピュータの産業応用への展望」 https://ithems.riken.jp/ja/events/outlook-for-industrial-applications-of-quantum-computers ・9/30(月)東京大学 光量子科学連携研究機構 セミナー 「 量子コンピュータの産業応用への展望」 http://www.psc.t.u-tokyo.ac.jp/jpn/events/article.php?site=psclocal&data=events$20190930_PSCseminar_nakagawa ・10/8(火)情報通信研究機構 知能科学融合研究開発推進センター セミナー「量子コンピュータを産業応用するためのアルゴリズム開発」 QunaSysでは、学術界の皆様との交流・協力を深めつつ、量子コンピュータ技術の社会実装へと取り組んでいきます。

量子コンピュータを用いてグリーン関数を効率よく計算するアルゴリズムを提案した論文(プレプリント)を公開しました。

株式会社QunaSys の遠藤(インターン)・倉田(インターン)・中川は、近い将来に実現される量子コンピュータであるNISQデバイスを用いて、分子や物質の性質の解析に重要な「グリーン関数」という物理量を効率的に計算する手法を提案した論文(プレプリント)を公開しました。

“Calculation of the Green's function on near-term quantum computers”

http://arxiv.org/abs/1909.12250

背景

NISQ (Noisy Intermidiate-Scale Quantum) デバイスという、誤り訂正機能のない量子ビットが数百個〜数千個程度集まった量子コンピュータが実現されつつあります。NISQデバイスの応用先として、分子や物質の性質(物性)の精確な計算が注目されており、特に、variational quantum eigensolver (VQE)というアルゴリズムを用いると分子や物質の最安定エネルギー・励起エネルギーを計算できることが知られています。

問題点

一方で、分子や物質の性質を量子力学に基づいて解析するには、エネルギー以外の情報も重要です。その中でも最も重要なのが「グリーン関数」という物理量で、グリーン関数を用いると分子や物質がどのような秩序を持っているかや、その外場に対する応答(例えば電気抵抗)を計算できます。グリーン関数は理論的な計算において普遍的で重要な役割を占めているにも関わらず、グリーン関数をNISQデバイス上で効率よく計算する手法は知られていませんでした。

方法・結果

株式会社QunaSys の遠藤(インターン)・倉田(インターン)・中川は、NISQデバイスを用いてグリーン関数を効率的に計算する2つの手法を提案しました。1つ目の手法では、NISQデバイス上で量子状態の時間発展を計算する既存のvariational quantum simulation アルゴリズムを拡張することで、グリーン関数を計算する量子回路が非常に単純化できることを示しました。2つ目の手法では、subspace-search VQE・multistate contracted VQEといった既存のNISQ向け量子アルゴリズムを活用し、グリーン関数のレーマン表示というものに基づいてグリーン関数を計算します。いずれの手法も、NISQデバイスでも実行可能だと期待できる浅い量子回路のみを用いています。さらに、物質中の電子を記述するハバードモデルというモデルに対して、高速な量子シミュレータQulacs を用いた数値シミュレーションを行い、グリーン関数が精度よく求められていることを確認しました。

展望

この結果により、古典コンピュータで計算することができなかったサイズの分子や物質のグリーン関数を、NISQデバイス上で計算できる可能性が示されました。これはNISQデバイスの物質解析への応用の幅を著しく広げるものと期待されます。

三菱ケミカルと有機材料の光学特性の精密制御を目指した共同研究契約を締結しました。

この度、株式会社QunaSysは、三菱ケミカルと共同研究契約を締結し、量子コンピュータを活用して有機材料の光学特性の精密制御を目指す共同研究契約を開始したことを発表します。

【プレスリリース全文】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000041464.html

量子コンピュータを用いて量子系の非平衡定常状態を計算する論文を公開しました。

株式会社QunaSysの吉岡(インターン)・中川・御手洗と顧問の藤井教授は、量子コンピュータを用いて量子系の非平衡定常状態を計算するアルゴリズム "dissipative-system Variational Quantum Eigensolver (dVQE)" を提案した論文(プレプリント)を公開しました。

Variational Quantum Algorithm for Non-equilibrium Steady States
https://arxiv.org/abs/1908.09836

背景

近年の量子情報処理技術の発展によって、誤り訂正機能のない数十〜数百の量子ビットで構成されるNISQ (Noisy Intermidiate-Scale Quantum) デバイスが実現されつつあります。NISQデバイス上で動作するアルゴリズムの中でも、特に注目されているのは、量子系のエネルギーと最安定状態を計算するVQE (Variational Quantum Eigensolver) です。NISQデバイス上でVQEを実行することで、量子化学・物性物理学・材料科学などの分野において、最先端のスーパーコンピュータでも実行不可能な、大規模・高精度計算を行うことができると期待されています。

問題点

分子や素材などといった計算対象を調べる際の問題設定は、二つに大別されます。これらはそれぞれ、周囲から隔絶された「孤立系」と、外部からのエネルギー流出入(散逸)が存在する「開放系」と呼ばれています。例えば、電気伝導に代表される非平衡現象など、散逸の影響が本質的となるような開放系の設定は随所に現れます。特に、長時間後に到達する「非平衡定常状態」は、量子デバイス設計等において非常に重要であるにも関わらず、NISQデバイスを用いて求める手法は知られていませんでした。

方法・結果

株式会社QunaSysの吉岡(インターン)・中川・御手洗と顧問の藤井教授は、量子コンピュータを用いて量子系の非平衡定常状態を計算するアルゴリズム  "dissipative-system Variational Quantum Eigensolver (dVQE)" を提案しました。具体的には、散逸のある系を等価な孤立系へ変換することで、既存アルゴリズムのVQEが適用可能となり、NISQデバイスで非平衡定常状態が計算できることを示しました。上記の変換は「得られた解が物理的でない可能性がある」という問題を抱えていましたが、計算に用いる変分量子回路の構造に特定の制約を課すことで、解決しました。さらに、得られた非平衡定常状態の物理量の計算方法についても、愚直な方法に比べて圧倒的に効率の良い方法を提案しました。最後に、数値計算による動作シミュレーションと、量子コンピュータの実機を用いた実験の両者によって、提案手法のデモンストレーションを行いました。特に後者では、Rigetti computing社が提供するクラウド型量子コンピュータ"Rigetti Quantum Cloud Service"を用いてdVQEによる非平衡定常状態を計算し、理論予測と一致することを確かめました。

展望

dVQEを適用することで、散逸の影響が不可避であるような、量子力学の効果が強く現れるミクロな系を、より現実的な状況下で計算することが可能になります。例えば、分子接合系などのナノサイズの輸送デバイスを設計する際、溶媒や電圧・温度勾配といった外部環境の影響を考慮した計算が可能になります。本研究により、NISQデバイスを用いた非平衡定常状態の計算手法が確立されたことで、NISQデバイスの産業応用の幅がさらに広がっていくことが期待されます。

NISQアルゴリズムのコンペティションサイト Quantaggle を公開しました。

NISQアルゴリズムの開発を加速させるため、コンペティションサイト Quantaggle を公開しました。

自作のアルゴリズムを用いて与えられた問題を解き計算精度を競う、ユーザー参加型のアルゴリズム比較サイトです。

複数のNISQアルゴリズムの、QunaSysによるベンチマーク結果も公開しています。

QuantaggleをNISQアルゴリズムの比較・創出のプラットフォームとして育てていくことで、実社会における量子コンピュータ活用を加速していきます。

https://quantaggle.com/

COOとエンジニアが加わりました。

DSC04165 copy.JPG

QunaSysに松岡 智代がCOOとして、井辺 洋平がエンジニアとして加わりました。
この二人の参画によってビジネスとエンジニアリングの両面が強化され、戦略的研究開発をさらに加速させます。

QunaSysでは引き続きエンジニアと各種インターンを募集しています

【メンバープロフィール】
松岡 智代
京都大学大学院工学研究科材料化学専攻博士課程修了後、Arthur D Little Japanに入社し、化学・素材・自動車を中心とした製造業に対する新規事業戦略/中長期戦略の策定支援を行う。ADLとQunaSys COOを兼務し、2020年1月にフルタイムとしてjoin予定。

本人コメント:
素材業界は今、大きな変局点を迎えています。マテリアルズインフォマティクス,量子コンピュータといった計算科学をいかに活用していけるかが、今後の競争力を左右するのだということをひしひしと感じています。QunaSysは、この新しい時代において、量子コンピュータと素材業界の接点となり、業界そのものの発展を牽引できる、確かなビジョンと開発力を持った会社です。QunaSysでは、これまでの自身の経験や知見を活かして、量子コンピュータという新しい技術と素材業界の接点を創出し、業界の計算科学活用を盛り上げていきたいと思います。


井辺 洋平
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻修士課程終了後、証券会社に入社。フルタイムのエンジニア兼エバンジェリストとしてQunaSysにjoin。

本人コメント:
大学院で物理学(物性理論)を専攻後、証券会社でクオンツとしてデータ分析等に従事していましたが、物理に対する情熱を抑えきれず、研究開発主導型の量子情報ベンチャーであるQunaSysへの入社を決意しました。
夢の技術と言われていた量子コンピュータですが、近年はハードウェアの開発競争の高まりによって実用的な応用がすぐそこまで来ており、非常にエキサイティングな時代と感じています。
私は、量子情報エバンジェリストとして素材・化学メーカー向けに勉強会・共同研究を行い、顧客企業の量子コンピュータ活用・新技術開発の加速に貢献します。
同時に、量子計算チームのエンジニアの一人として、自社開発の量子コンピュータの高速シミュレータであるQulacs/Qulacs Plusの開発に携わり、量子コンピュータ応用研究の地盤を固めていきます。
機械学習や金融を含む様々な分野への応用も意識し、常に視野を広く持っていきたいと思います。