ダボス会議が警告する量子リスク:暗号はいつ破られるのか
2026年の世界経済フォーラム(WEF)、ダボス会議が開催中です。
ダボス会議に先立って公開されるWEFの「グローバル・リスク・レポート」において、 量子技術は社会や経済に変革をもたらす重要なテーマとして取り上げられています。
本記事では、WEFレポートの概要、 量子アルゴリズムによる暗号解読のリスク、 そして最前線の研究者である当社技術顧問の大阪大学、藤井啓祐教授による最新の見立てを交え、 企業が今知っておくべき量子リスクの現状を解説します。
1. WEFレポートにおける「量子」の位置づけ
WEFの「グローバル・リスク・レポート2026」では、 量子技術の飛躍的進歩(Quantum Leaps)が 中長期的な重要テーマとして詳細に分析されています。
レポートでは、 量子コンピューティング、量子通信・セキュリティ、量子センシングの 3つの分野で急速な変化が起きると予測されています。
これらは創薬や気候モデルの精度向上など 社会に大きな恩恵をもたらす一方で、 新たなリスクも孕んでいます。
特に、量子技術の優位性を巡る国家間の競争(量子軍拡競争)や、 技術を持つ国と持たざる国の間で経済格差が広がる 「量子デバイド」への懸念が指摘されています。
レポートでは、今後10年間で量子技術とAI(人工知能)が融合し、 双方が加速的に進化することで、 リスクが連鎖的に拡大する可能性にも言及されています。
2. 量子アルゴリズムによる暗号解読のリスク
WEFレポートの中で、 企業にとって最も差し迫った脅威として挙げられているのが 「暗号技術への安住(Cryptographic complacency)」、 すなわち現在の暗号技術が量子コンピュータによって 破られるリスクです。
具体的には、以下の2つの脅威が指摘されています。
- 「今盗んで、後で解読する(Harvest now, decrypt later)」攻撃: 攻撃者が現在の暗号化されたデータを盗み出し、 将来的に高性能な量子コンピュータが実現した時点で解読するという手法です。 これにより、個人情報や知的財産が 長期的な漏洩リスクに晒されます。
- デジタル認証基盤の崩壊: 現在のインターネット社会の信頼を支えている 「公開鍵暗号基盤(PKI)」が破られるリスクです。 これにより、なりすましが可能となり、 金融取引、デジタル契約、 さらには自動運転車や重要インフラの制御システムが 乗っ取られる恐れがあります。
レポートによると、2024年の調査では、 量子専門家の53%が 「今後10年以内に、RSA-2048(現在の主要な暗号方式)が 解読される可能性が50%以上ある」 と回答しており、 対策は待ったなしの状況です。
3. 藤井啓祐教授の視点:アルゴリズムの進化が加速させる「Xデー」
量子コンピュータが実用化され、 暗号が解読されるまでのタイムラインについて、 ハードウェアの進化だけでなく 「アルゴリズム(ソフトウェア)の進化」が 鍵を握っているという重要な視点があります。
当社の技術顧問、藤井啓祐教授は、 YouTubeチャンネル「PIVOT」の対談において、 素因数分解(暗号解読の基礎となる計算)に 必要な量子ビット数の劇的な減少について 言及しています。
藤井教授によれば、 かつて2012年頃には、 素因数分解を解くためには 1億量子ビットが必要とされていました。
しかし、アルゴリズムの改良や エラー訂正技術の効率化により、 2019年には2000万量子ビット、 そして2025年現在では 100万量子ビットで可能であるという 見積もりにまで減少しています。
これはハードウェアの進化とは関係なく、 純粋に「理論・アルゴリズムの進化」に よるものです。
藤井教授は、 今後さらに研究が進めば、 必要な量子ビット数は 10万程度まで下がるのではないかという 見立てを示しており、 これまで考えられていたよりも 少ないリソース、 あるいは早い時期に 暗号解読が可能になる可能性を 示唆しています。
4. Shorのアルゴリズムと今後の対策
WEFレポートでも言及されている通り、 現在の公開鍵暗号を脅かす中心的な存在が 「Shor(ショア)のアルゴリズム」です。
Shorのアルゴリズムは、 因数分解などの計算を 量子コンピュータを用いて 高速に行う手法であり、 これが実用規模で稼働すれば、 現在広く使われているRSA暗号などは 安全性を失います。
藤井教授の話にもあるように、 必要な量子ビット数の要件が 下がり続けている今、 企業は「まだ先の話」と 楽観視することなく、 耐量子計算機暗号(PQC)への移行や、 リスクアセスメントを 早期に開始する必要があります。
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