QunaSys総額17億円の資金調達を実施
あわせて5億円のコミットメントライン契約を締結
量子コンピュータ向けアルゴリズム・ソフトウェア開発に強みを持つ株式会社QunaSys(本社:東京都文京区、代表:楊天任、以下「QunaSys」)は、スパークス・アセット・マネジメント株式会社(本社:東京都港区、代表:代表取締役社長・CEO阿部修平)が運営する未来創生3号ファンドをリードインベスターとして、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社、富士通ベンチャーズ株式会社、三菱電機株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社、KDDI株式会社、京セラ株式会社の各社が運営または運営に関与するファンド、及び日本ゼオン株式会社を引受先とする第三者割当増資により、シリーズB2ラウンドで計17億円の資金調達を実施しました。同時に、三井住友銀行と5億円のコミットメントライン契約を締結するとともに、KDDI株式会社、京セラ株式会社と資本業務提携に向けて合意したこともお知らせいたします。
調達の背景と直近の事業概況
2019年以降、各国政府や産業界の関心の高まりとともに投資が活発化し、材料開発シミュレーションを中心に量子コンピュータの実応用に向けた研究や技術開発が進展しました。2023年以降、世界の主要プレイヤーによる誤り訂正技術の実証が進んだことにより「夢の量子コンピュータ」の実現が現実味を帯び、量子産業は大きな転換期を迎えています。(※1)
QunaSysでは、2022年の資金調達以降、量子コンピュータの産業応用を軸に業界の発展を牽引してきました。量子アルゴリズムの研究開発では、富士通様、三菱電機様など多くの企業や研究機関との共同研究を通じて、量子コンピュータの最初の応用を視野に入れた量子化学計算の新手法QSCIの開発(※2)や、誤り耐性量子コンピュータ時代の到来を見据えてCAE(Computer-Aided Engineering)など新たな応用方法の開拓(※3)を行ってきました。
量子アルゴリズムの開発者・研究者向けには、2022年11月にモジュラーで効率的なオープンソース量子計算ライブラリQURI Parts、2024年10月には誤り訂正量子計算を見据えた研究開発に今から取り組むためのツールとしてQURI SDKをローンチするとともに、産業技術総合研究所様などの実機を保有する拠点に対して量子コンピュータの利用環境整備を図ってきました。さらには、大阪大学の藤井研究室との共同研究を通じて、独自の誤り訂正アーキテクチャを開発しました。
また、量子コンピュータによる革新的な材料開発を行うための土壌づくりとして、日本ゼオン様との材料開発のデータマネジメントシステムの構築や、研究開発現場の革新のための大規模言語モデル(LLM)の技術開発を進めてきました。
2023年5月には光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)、2023年10月には戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に提案が採択され、量子人材の育成や量子アルゴリズム性能評価指標の標準化など政策的イニシアティブにも貢献してまいりました。2023年10月にはデンマークに拠点を設立し、欧州での顧客層や応用領域の開拓を進めています。
(※1)McKinsey & Company “Quantum Technology Monitor” April 2024; Boston Consulting Group “The Long-Term Forecast for Quantum Computing Still Looks Bright” July 18, 2024.
(※2)Quantum-Selected Configuration Interaction [QunaSys-Osaka U., arXiv:2302.11320 (2023)]
(※3)例えば、構造計算などで重要な固有振動解析への量子位相推定の応用 [QunaSys, arXiv:2307.07478 (2023)]
調達の目的と今後の展開
量子産業が夢の誤り耐性量子コンピュータの実現に向けて大きな転換期を迎えているいまをQunaSysは更なる飛躍の機会と捉え、調達資金を活用して国内外で事業を推進していきます。「量子コンピュータが産業に貢献する未来へ。」のビジョンのもと、エンドユーザー企業やパートナー企業とともに、産業課題を解決する応用領域の開拓や実応用のための技術開発や事業開発、量子コンピュータの力を引き出すための基盤技術開発を進めてまいります。
調達概要
〇引受先
・スパークス・アセット・マネジメント株式会社(未来創生3号ファンド)(リードインベスター)
・大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(OUVC2号ファンド)
・京セラ株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(KVIF-Ⅰ)
・KDDI株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(KDDI Open Innovation Fund 3号)
・JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社(VGF1号)
・日本ゼオン株式会社
・富士通ベンチャーズ株式会社(合同会社富士通ベンチャーズファンド)
・三菱電機株式会社/グローバル・ブレイン株式会社(ME イノベーションファンド)
(括弧内は各社が運営または運営に関与するファンド名。リードインベスター以降は五十音順)
各投資家からのコメント
スパークス・アセット・マネジメント株式会社(リードインベスター)
ヴァイスプレジデント 物河しおり氏
QunaSysは、コンソーシアムを通じて国内の量子産業の発展に大きく貢献し、量子化学におけるアルゴリズムやアプリケーション開発を基盤とした共同研究で確固たる地位を築いてきました。昨今の量子コンピュータハードウェアの開発進展により、誤り訂正技術の実用化が現実味を帯びる中で、QunaSysは量子コンピューティングの実現において価値を提供できる数少ない企業であると考え、今回のシリーズB2ラウンドでリードインベスターとして投資をさせていただきました。今後、QunaSysのユニークなポジショニングを活かし、日本を代表する企業として量子コンピュータの産業応用に貢献されることを期待しております。
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社
代表取締役社長 清水速水氏
夢のような高機能材料が次々と生み出される未来、そのような未来の到来が実はそう遠くないのではないかと強く期待させてくれたのがQunaSysでした。同社には量子コンピュータの可能性を引き出し、社会に大きな恩恵をもたらす量子アルゴリズムの開発を実現する優秀な研究者が揃っており、同社と連携する大阪大学の量子技術の社会実装にも結び付くと考え出資させて頂きました。同社の更なる発展に向けて全力で支援をさせて頂きます。
京セラ株式会社
執行役員 研究開発本部長 仲川彰一氏
この度、KVIF-IはQunaSysに出資させて頂けたことを非常にうれしく思います。弊社では、「次にやりたいことは、私たちには決してできないと人から言われたものだ」というモットーの下、研究開発に取り組んでいます。量子コンピュータの活用には、その特性に応じたユースケースの探索とハードを使いこなすプラットフォーム、ソフトウエアの開発環境が重要と考えます。QunaSysはその両面の開発とともに、優秀な人財と仲間づくりにも注力されており、将来の量子コンピュータ時代に必須となるパートナーだと考えました。我々は、よりよい未来の実現に、高い技術力も持って果敢に挑戦されるQunaSysを全力で応援いたします。
KDDI株式会社
オープンイノベーション推進本部 本部長 中馬和彦氏
量子コンピュータは、スマホが個人の生活を一変させたように、産業や経済に大きな変革をもたらすと期待されています。一方で、商用化に至るまでの道のりには依然として多くの課題が残されています。QunaSysは、実用化に直結するアプローチを進めると共に、業界エコシステムの形成を通じて社会実装を積極的にリードしています。KDDIは今回の出資を通じてQunaSysが牽引する量子コンピュータのある世界の実現を応援してまいります。
JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社
ベンチャーキャピタリスト 桑原優樹氏
前回ラウンドでの出資に引き続き、今回ラウンドでも追加のご出資をさせて頂きました。この2年半ほどの間でQunaSysの組織規模は2倍以上に増強され、様々な企業や研究機関との共同研究を通じて量子コンピュータの産業応用に向けた多くの成果を出すことが出来ました。その結果、事業も順調に成長しています。引き続き日本の量子コンピュータ産業のリーディングプレイヤーとして業界を牽引して頂くことを期待しています。
日本ゼオン株式会社
総合開発センター長 高橋和弘氏
この機会に革新的な技術と卓越したチームと協業を強化できることを大変誇らしく思っています。QunaSysは化学分野で量子コンピュータの社会実装を目指しており、日本ゼオンは株主の中で唯一の化学系事業会社として、彼らとビジョンと戦略的目標を一とする立場にあります。我々は継続して量子コンピュータ社会実装へ向けたデータ基盤とモデルを確立する試みを続けてきましたが、今後の成長と成功に向け、さらに強力なパートナーシップを築いていきたいと考えています。
富士通株式会社
富士通研究所 フェロー兼量子研究所長 佐藤信太郎氏
過去四年間にわたり、当社はQunaSysと共同研究やソフトウェア連携をはじめ様々な形での連携をさせていただき、その高い技術力を目の当たりにしてきました。現在量子コンピュータは変革期を迎え、今後はより実際の産業への展開が期待されています。当社もそうした展開を進めていく上で、世界レベルの能力と人材を擁するQunaSysは重要なパートナーであり、量子技術の社会実装を共同で進めて参りたいと思います。
三菱電機株式会社
常務執行役兼CDO(DX担当、ビジネスイノベーション本部長) 武田聡氏
当社はQunaSysの技術力を高く評価しています。2022年の初回出資をきっかけに、量子機械学習を中心とした共同研究を進めており、国際学会で発表を行うなど着実に成果を出しています。量子コンピュータのソフトウェア分野における、国内トップのスタートアップ企業として更なる成長を期待して追加投資を決定しました。量子コンピュータの早期社会実装に向け、引き続き、技術開発に協力してまいります。
既存投資家からのコメント
ANRI
General Partner 鮫島昌弘氏
量子産業はただのバブルだったのか、本当の産業になるのか、いよいよ試される時代になってきました。
これからが本番です。
2050年のQunaSysの皆さんへ、世界のてっぺん取ってますか?
グローバル・ブレイン株式会社
代表取締役社長 百合本安彦氏
「量子コンピュータの産業応用」というビジョンに強いこだわりを持ち、創業以来一貫して事業に取り組まれてきたQunaSysの量子化学計算ソフトウェアは、世界中で高く評価されています。また、独自の誤り訂正アーキテクチャの開発にいち早く取り組む同社の技術は、グローバルでも競争優位性が高く、業界の発展をますます牽引されていくことと思います。今回の資金調達の成功によって、日本発のグローバル企業として今後さらに量子コンピュータの産業応用に貢献するであろうQunaSysを、グローバル・ブレインとしても引き続き全力でご支援してまいります。
International Business Machines Corporation
IBM Quantum Adoption and Business Development副社長 スコット・クラウダー博士
QunaSysは、化学分野の基本的な課題である分子の基底状態エネルギーを求めるQURI ChemistryをQiskit Functionsサービスとしてリリースするなど、量子アルゴリズムやサービスの開発において著しい進展を遂げていることを大変嬉しく思います。
IBM Venture Capitalグローバル責任者兼副社長 エミリー・フォンテーヌ氏
QunaSysへの投資は、IBM Venturesのキャピタルプラスモデルがイノベーションを促し、戦略的に重要な分野での連携を強化し、量子コミュニティが実用的なアプリケーションを開発するための後押しになることを示すものになります。
QunaSys代表 楊天任のコメント
QunaSysは、量子コンピュータ業界が新たな成長段階に入る中で、今回の資金調達を成功裏に完了することができました。投資家の皆様には、私たちのビジョンや、創業以来築き上げてきた技術に対して深い信頼を寄せていただき、心より感謝申し上げます。
現在、誤り訂正機能を持たないNISQ量子コンピュータの産業利用は難しいという見方が増えていますが、2023年以降、誤り訂正技術のデモンストレーションが次々と成功を収め、誤り耐性量子コンピュータの実応用が一層現実的になってきました。日頃から私たちを支えてくださるお客様のご期待に応え続けるために、現在の研究開発を進めるとともに、誤り訂正アーキテクチャや長期的なアルゴリズム開発に取り組み、誤り耐性量子コンピュータ時代の産業応用の可能性を広げていきます。
私たちは「We are Quantum Native.」という創業当時からのスローガンのもと、量子ネイティブな人材に努め、お客様や多様なパートナーとともに、量子コンピュータが産業に貢献する未来の実現に向けて挑戦し続けます。
【株式会社QunaSysについて】
QunaSysは、今まで裏舞台で社会を支えていた量子物理学を表舞台に引き出し、量子性を積極的に利用することで、既存のテクノロジーで成しえなかったことを実現するために創業された会社です。量子コンピュータの実用化にはハードウェアの進展が必須ですが、本当に使える技術にするためには、アルゴリズムやソフトウェアの進歩が不可欠です。QunaSysは、量子コンピュータの性能を最大限に引き出すためのアルゴリズム・ソフトウェアを提供することで、量子コンピュータの「社会実装」に貢献します。
【お問い合わせ】株式会社QunaSys
URL: https://qunasys.com/
E-Mail: pr@qunasys.com(広報IR担当)
本文中に記載の社名及び製品名は、株式会社QunaSysまたは各社の商標または登録商標です。