News

QunaSys、IEEE Quantum Week 2023にてワークショップを開催  〜量子アルゴリズム・グランドチャレンジの受賞者発表〜

量子コンピュータのアルゴリズムやソフトウェアを開発しているQunaSysは、米国シアトルで開催されたIEEE Quantum Week 2023においてワークショップを開催しました。「アルゴリズム・グランドチャレンジ: 実用的アルゴリズム開発のためのNISQデバイスの活用」と題されたこのワークショップには、量子コンピューティングコミュニティの研究者や開発者が集まりました。
 
このワークショップのハイライトは、量子アルゴリズム・グランドチャレンジ(Quantum Algorithm Grand Challenge、以下「QAGC」)の受賞アルゴリズムのプレゼンテーションでした。コンテストの受賞者は、画期的なアルゴリズムを披露し、量子コンピューティングの実用的な応用に関する洞察に満ちた議論がなされました。コンテスト受賞者、QunaSys、Algorithmiqの代表者によるパネルディスカッションも、活発なものとなりました。
 
ワークショップの後、QAGC受賞者はIEEE Quantum Weekカンファレンスに招待されました。QunaSysは受賞者の旅費、宿泊費、カンファレンス参加費を負担することで、イノベーションへのコミットメントを示しました。
 
QAGC 2023の受賞者と賞金は以下の通りです。


チャレンジの問題は、厳密解が計算可能で、分子の問題と同様の性質を持つように改良されたフェルミ・ハバード模型の基底エネルギーを計算することでした。このモデルを利用することにより、古典計算機でシミュレーションできないサイズのベンチマークが可能になります。研究者が提案するアルゴリズムの結果と厳密解の差の絶対値で測定される精度に基づき、アルゴリズムを評価しました。評価対象のシステムのサイズは8量子ビットで、シミュレータでの実行時間が1000秒を超えないものとされました。チャレンジは2023年5月3日に開始され、29カ国の参加者から30のアルゴリズムが提出されました。
 
QAGCは来年も開催予定です。今後のイベントやチャレンジに関する最新情報は、QunaSysのX(旧Twitter)アカウントをフォローしてください。
 
 
受賞コメント
1位:長江 悠太郎 氏(Fixstars)
量子計算は興味があって他のコンテストにも出ていましたが、このコンテストをきっかけに量子力学などの基本的なことを勉強しました。チームメイトの協力があってこその結果ではありますが、優勝することができてとても嬉しいです。私は研究者ではありませんが、今回のコンテストとIEEE Quantum Weekで得た知見を活かし、来年も参加して結果を残せたら良いなと思っています。
 
2位:佐藤 優大 氏(東京理科大学)
QAGCは量子コンピューティングについて学んだ自分の知識を検証するための良い機会でした。ノイズや実行時間の制約を考えたアルゴリズムの考案は、難易度は高いものの応用では必須な条件であり、それを踏まえた上での実装は貴重な経験となりました。また、自力でプログラミングをするための情報収集や、他の参加者のアルゴリズムを通し、量子アルゴリズムへの理解を深めることもできました。来年のQAGCにも、より知見を深めた上で参加したいと思っております。

3位:森本 恒平 氏(京都大学)
このコンテストは、現在の量子コンピュータを使って量子化学の実用的な問題に取り組む、挑戦的で革新的なコンテストでした。コンテストを通して、最適な仮設と最適化ソルバーを決定するために試行錯誤を繰り返す難しさに直面しました。しかし、この経験から多くのことを学び、非常に有意義な時間を過ごすことができました。上位入賞者が採用したアルゴリズムは魅力的であり、変分量子固有値ソルバーの今後の実用化に向けて、貴重な示唆を与えてくれると思います。最後に、QAGCの運営に感謝の意を表したいと思います。来年のコンテストにも参加したいと思ってます!

特別賞:鈴木 大地 氏(東京大学)
量子化学に向けた量子計算の発展に研究者以外も取り込むきっかけとなる画期的なコンテストでした。初心者はシンプルな問題を通して量子化学やVQEを学ぶ基礎となり、研究者には困難な制約を乗り越える良いチャレンジの機会だったと思います。今後益々量子化学のための量子計算を盛り上げるコンテストになることを願ってやみません。


QAGC共同主催 Algorithmiq 社 Stefan Knecht 氏 コメント
IEEE Quantum weekで量子アルゴリズム・グランドチャレンジの入賞チームに会えたことは、実りある活発な議論と相まって、素晴らしい経験となりました。私たちは、量子化学に触発された課題を近い将来のデバイスで解決するための、多種多様な既存および新規アルゴリズムを目の当たりにしました。Algorithmiqでは、2024年量子アルゴリズム・グランドチャレンジの開催に向け、QunaSysとパートナーシップを組むことを楽しみにしています。
 
QAGC担当:小嶋 涼太(QunaSys)コメント
QAGCでは、現実の実機に即した条件下でアルゴリズムの開発をテーマとしました。参加者の方々に提出していただいたアルゴリズムには、厳しいノイズと実行時間の制約に対処するために、今まで提案されてきた様々なテクニックの巧みな組み合わせといった創意工夫が数多く見られ、非常に興味深いものばかりでした。今後もQAGCを通じて、現実の実機で実行可能な実用的なアルゴリズムの開発が進むことを期待しています。

2023/09/29

Category: News
Category: News
Year: 2023